Drysdale 油圧駆動2WD・前後油圧操舵モーターサイクル
油圧駆動2WD(2輪駆動)・前後油圧操舵式モーターサイクル。
V8エンジン搭載のロードバイクで有名なオーストラリアの「DRYSDALE」の、Ian Drysdale氏が、デザインから製作まで行ったもの。
彼のアイデアを具現化するためのプロトタイプ。
以前、ebayに売りに出されていた(2014/012)。
価格は、オーストラリアドルで、AU $10,000。
だが、この値段でも元は取れないほど凝った造りである。このようなモノを作る事ができる環境に驚く。
駆動・ステアリング方式もユニークだが、車体構成も実にユニーク。
完全にモーターサイクルの常識を踏み倒している。
フロントは常識的なセリアーニタイプではなく、ハブステアで油圧駆動のため、ハンドル下のスペースはガラ空。
ヒューエルタンクは、ハンドルの前。
エンジンは、一見、通常排気に見えるが、後方排気。
エアフィルタは、ヒューエルタンク下に位置する。
インホイール式油圧モータで駆動される。そのために、チェーン等のメカニカルな駆動装置は無い。
エンジンは、250t・2ストローク。
トランスミッションの代わりに、油圧ポンプを駆動し、発生した高圧オイルは、ホイールのハブにセットされた油圧モータをドライブする。
ステアリングも油圧駆動で、前後ホイールともどもステアされる。
ハブステアリングシステムであるが、無理してステアリングアングルを稼ぐよりも、前後ステアにしたのではと考えられる。
使われているメインポンプは、アキシャル型と呼ばれるタイプの中で、斜軸式(bent-axis type)と呼ばれているもの。
駆動軸に対して傾斜したシリンダブロックが、駆動軸と共に回転することでピストンがシリンダ穴に対して往復運動し、ポンピングが行なわれる。
シリンダブロックは傾斜角を変えられるため、オイル吐出量を変える事ができる(イラスト画像参照)。
駆動用油圧モータは、5ピストンタイプのラジアルプランジモータを使用している。
ラジアル型モータは、回転軸に対し、放射状に配列されたプランジャの往復運動を駆動軸に伝え、回転運動に変える。
通常のブレーキは装着されていない。
油圧システムでは、スロットルを絞り、エンジン回転数が下がれば、オイルの循環量が減る。
よって、スロットルを絞るとブレーキがかかる。
ただし、オイルラインの内圧が上昇し、何回かオイルシールからブローしたそうで、通常のブレーキが必要であるようだ。
このバイクの油圧システムでは、エンジンが停止した状態では、ホイールは回らない。
走行中にエンジンが停止するとホイールはロックする。
また、何らかの原因で、走行中にホイールがロックすると、エンジンが停止する可能性が高い。
そのため、バイバスバルブが必要である。
その場合、通常ではブレーキが利かないということになる。
センターデフは装着されていない(この点については、補足参照のこと)。
ただし、分岐バルブ(Dividing valve)を用いれば、どちらか一方のホイールスピンを防止することができるので、分岐バルブは必要であると述べている。
(つまり、前後輪の差動を逃がすため、リミテッドスリップ的に使用するということか?)
このモデルでは、様々なトラブルを解消するためのバルブやバイパス回路は、装置の複雑化や重量増加により採用されていない。
取りあえず、基本的な動作試験を優先させたのだと思う。
[補足]
両輪ステアということは、前後ホイールの差動は無い筈だから、センターデフは不要ということになる。
先に、「無理してステアリングアングルを稼ぐよりも、前後ステアにしたのではと考えられる」と書いた。それも理由の一つかもしれないが、センターデフを省くことが出来るというのが、より大きな理由かもしれない。
[余談]
この方式では、パワーオフ時にハイサイトが発生しやすい感じがするのだが・・・。
参考サイト: Drysdale Motorcycle Company