興味の壺

メカデザイン、機器デザイン、プロダクトデザイン、伝統的アーキテクチャー等を紹介します。

大栄技研工業製電動アシスト自転車

車両用金属板金加工等を行ってきた大栄技研工業が、電動アシスト自転車(商品名:えば)を開発、今年(2010年)6月から販売を開始した。
同社もリーマンショック以降の受注減に伴い、経営の多角化・安定化を目指し、同社の持つ板金技術を生かし、新たな分野に参入したのだ。

エポヴェロ側面 厚さ0.5〜0.6mmのパイプをロウ付け溶接したフレームと、20インチアルミホイールを使用し、重量16.5Kg(外装変速機搭載車)と、従来の電動アシスト自転車に比べ、5〜8Kgの軽量化を実現。

フレーム素材は、強度とフレキシビリティを併せ持つ「クロムモリブデン鋼」を使用。

前後ホイールはサスペンション付き(フロントはエアサス、リアはラバーとスプリングの複合)。

ハイクオリティなシマノ製ミッション、ブレーキキャリパー搭載。

ターゲットを40〜50代男性に絞り、価格は40万8,000円(消費税5%込)とした。

外観は、20インチホイールと、スペースフレームが軽快で好印象を与えている。
円筒状のバッテリーを収納する円弧状のフレームと、ハンドルポスト前部に回した円弧をデザイン上のアイデンティティとしている。

多くの電動アシスト自転車が販売され、スポーツタイプを標榜するものも多いが、このような軽快感のある製品は少ない。

ただし、この車体を見ると、モールトンの自転車(注1)を想起するのは私だけではあるまい。そのため、どうしてもモールトンと比較してしまう。
(ちなみに、前後サスペンションのデザインは1970年代に登場した、モールトンMKVと、ほぼ同様である)

エポヴェロ側面上方 「エポヴェロ」のスペースフレームには、まだ整理、統合の必要性を感じる。
円弧にデザイン上のアイデンティティを与えている。これは理解はできるが、ハンドルポストから前の部分は機能的には無意味で、重量的にはデメリットである。
円弧に、このデメリットを説得させるだけの意味があるのか・・。

自転車のよさは、軽量化のために不必要な加飾を削いだ機能美にあり、様々なMTBや、モールトンが支持されるのも、この観点からであろう。
また、フレームの補強がくどい。もう少し整理できないものか?(画像下)。

ともあれ、このようなカテゴリーの電動化は魅力的な試みだと思えるし、何より、卓越した技術を保有する中小の企業の新たなチャレンジは素晴らしいと思う。
モールトンのように時間をかけて熟成し、昇華していくことを願っている。
(ちょっと難しい??、でも思えば叶う)

余談:この「エポヴェロ」もそうだが、電動アシスト車は、モーター部分が整理されていない。見た目も不安感が残る。この部分の改善はできないものであろうか。
サンヨーのハブモーター方式があったと思うが(うら覚え)、クランクシャフトにモーターを組み込むなりできないものだろうか?。
YAMAHAのコンセプトモデル「PAS er」は、一つのソリューションであろう。

注1:モールトンの自転車とは、約50年前、英国のアレックス モールトン博士(注2)が開発した。小径ホイール自転車の革命とされる。
現在でも、モールトン社は博士のコンセプトに基ずく高級自転車を販売しているし、同社と技術提携したブリジストンも、オリジナルに近いモールトンの製造販売を続けている。

注2:英国の歴史的名車であるミニ(アレック・イシゴニス設計)に採用された、ハイドロラスティックサスペンションをインベントしたことで有名。

画像は、「T's factory ミニベロ工房」からお借りした。

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