興味の壺

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Panasonic Let's Note CF-B11

パナソニックのレッツノート。
海外に持参するため、信頼性の高さを評価して選択。

国内生産品。年間故障率は、他社平均の約6分の1。
「堅牢ノート」という特殊な市場では、世界的な評価を得ている。
欧米、アジアを含めてグローバルシェアは60%と、圧倒的。

Panasonic Let's Note CF-B11 現物を見ると、アルミ粉を吹きかけたような、ギラついた塗装に戸惑う。

それほど薄くもないし、ディテールも洗練さに欠ける。
ただし、今回は実用品として見ているから、薄すぎても、スタイリッシュ過ぎてもいけないと思っている。
ちょっと野暮だけど、レッツノートの堅牢さを感じさせる意匠は安心感を呼ぶ 。
持ち歩くので、信頼性が第一なのだ。

所で、レッツノートの放熱ファンには、凄い技術が用いられているのだ。
「ハイドロ ダイナミック ベアリング」或は、「フルード ダイナミック ベアリング」と呼ばれる軸受けである。

同社は、軸受けにオイルを用いた「流体軸受け」を採用している。
シャフトの軸受けの内壁には、微小な横V字型の溝を設けている。
この構造により、シャフトが回転すると、溝の中のオイルは、V字の先端部に誘導され、行き場を失い溝から噴き出し、シャフトをフローティングさせる。
そのため、振動や摩擦を軽減できる。
振動の軽減により、長時間経過しても騒音が大きくなりにくい。
いわゆる「音響寿命」が長くなり、摩擦の軽減で、「回転寿命」も長くなる。
V溝の深さは5μmで、幅は70μmと非常に微細である。

ハイドロ ダイナミック ベアリング内部 もともと、レッツノートは「タフさ」を売りにした高信頼性モデルである。
そのため、「長寿命の流体軸受けファンを使ってきた。

普通のノートパソコンからしてみれば、正直、オーバースペック気味かもしれない」(メーカー説明員)。

パナソニックでは、この技術を車載用に転用した。
2001年頃からカーナビに、2011年ごろからLEDのヘッドランプに採用されている。
加えて、温度変化してもオイルの状態が安定しているので、高温動作時の信頼性も高いという。

60℃で3万時間という「カーナビ水準」(説明員)の寿命を達成できる。
「実力としては60℃で4万5000時間はある」(説明員)。
実際、約10年前のカーナビ製品に採用された放熱ファンは、今でも動作しているという。

高温でも安定して動作するので、放熱ファンのフレーム筐体に金属を採用し、ファンのフレーム筐体全体を使って放熱も可能になるという。
流体軸受け以外の方式では「放熱ファン自体があまり熱くならないようにしないといけないので、フレーム筐体に金属を採用するのは難しい」(説明員)。
特に出力が大きい、車載のオーディオアンプで威力を発揮するという。

レッツノートのカタログには、「ハイドロ ダイナミック ベアリング」の説明はされて無かったと思うが、このような信頼性のための、見えない配慮は嬉しい。

画像は、小さな軸受け内部に刻まれたV溝。
V溝の深さは5μm、幅は70μm。「この微細構造を少量ならば作れるかもしれない。だが、車載機器向けに多量に量産できるのは我々くらいだろう」(説明員)と胸を張る。

参考サイト
Hardware Secrets
日経テクノロジー