興味の壺

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ラムポンプの作動原理

ラムポンプのアイデアの基のコンセプトは、「ウォーターハンマー」の衝撃波です。
水は重量があるため、一定の速度で移動する水量は運動量を持っており、それは、すぐには停止できません。

車がレンガの壁に衝突すれば、金属の車体は潰れるように、もしも、パイプ内の水の流れが、突然バルブによって止められれば、水の不意の停止による、圧力「スパイク」が、突如出現します。
家の水道栓を急に閉めると、パイプの中で、小さな「ゴン」という音を聞くことができますが、それが、ウォーターハンマー現象です。

ここでは、どの様にラムポンプが作動するのか、順序を追って簡単な説明を行います(ノート1参照)。

イラスト:水撃ポンプ:水はスイングチェックバルブから外へ流れる 画像:水撃ポンプ:水はスイングチェックバルブから外へ流れる Step-1

水(青矢印)は、駆動パイプを通り、最初は開いているスイングチェックバルブ(#4)から、外へ流れます。
水は次第に速く、バルブの外へ流れ出します。

イラスト:水撃ポンプ:スイングチェックバルブが閉じる 画像:水撃ポンプ:スイングチェックバルブから流れる水は停止 Step-2

ある時点で、水は、スイングチェックバルブ(#4)を通り抜けながら、バルブのフラッパーを引っ張り上げ、閉めてしまいます。

配管内の水は急速に動いていています。その時、バルブが閉じたことにより、全ての水の重量と運動量は、止められます。
それは、閉じたバルブから、高圧スパイク(赤矢印)を発生させます。

高圧スパイクは、一部の水(青矢印)を、スプリングチェックバルブ(#5)を通って、プレッシャーチャンバーに送り、チャンバー内の圧力を僅かに増加させます。

パイプ内の一部の高圧スパイクは、スイングチェックバルブから、何処へも行く所が無いので、パイプを逆戻りし始めます(赤矢印)。

これは、パイプに非常に小さな後方への「流れ」を発生させます。
画像は、スプリングチェックバルブが閉じた瞬間です。水の塊が宙に浮かんでいるのが見えます。

イラスト:水撃ポンプ:スプリングチェックバルブが閉じる Step-3

圧力波(高圧スパイク)(赤矢印)はパイプ内を逆流するので、スイングチェックバルブからは、低圧の流れが起きます(緑矢印)。
スプリングチェックバルブ(#5)は、圧力の低下によって閉じ、プレッシャーチャンバー内の圧力は維持されます(ノート1参照)。

イラスト:水撃ポンプ:スイングチェックチェックバルブが再び開く 画像:水撃ポンプ:開いているスイングチェックバルブ Step-4

圧力(緑矢印)が低くなるため、フラッパーは下がり、スイングチェックバルブ (#4) は再び開きます。 画像は、スイングチェックチェックバルブが開いている状態。

イラスト:水撃ポンプ:スイングチェックチェックバルブが再び開く Step-5

ウォーターハンマーの高圧衝撃波(赤矢印)の大部分は解放されます。
衝撃波が解放された後、ポンプより高い水源の水位により、水は、簡単にスイングチェックバルブ(#4)に戻り始めます。
そして、水は再び水撃ラムに向かって流れ始めます。

Step-6

水は、スイングチェックバルブ(#4)から流出し始め、プロセスは再開します。

1から6では、水撃ポンプの作動サイクルを説明しました。
圧力波理論は、水撃ポンプの作動の技術的な詳細を説明しますが、我々は、単にそれが作動する理由を知る必要があります。
水撃ポンプは、通常、1秒に1回のサイクルで作動しますが、装置によっては、もう少し早かったり、遅かったりします。
各パルス(或はサイクル)は、プレッシャーチャンバーに、少しづつ圧力を加えていきます。
もし、アウトレットバルブを閉じると、ラムはプレッシャーチャンバーを最大圧力にした後、停止します。

ノート1

実際には、水撃ポンプは、3つの異なる圧力波を内包しています。
(a)スイングチェックバルブのフラッパーが閉じた時、水源まで戻る、最初の高圧スパイク。 (b)水源から閉じられたフラッパーへの通常の圧力波。
(c)水源への低圧波。スイングチェックバルブのフラッパーが開いた時に生じる。それらの圧力波は、音速で移動するので(パイプの材質で変わる)、全ては迅速に起きる。
これらの複雑なプロセスは、上記説明には含めていない。
(参考文献:Fluid Mechanics, Second edition, Roberson and Crowe, and personal communications with Mr. John Stanley, 2013.)

ノート2

水撃ポンプは非常に非効率的である。
通常、1ガロンの水を水撃ポンプで揚水するためには、8ガロンの水をスイングチェックバルブから排出しなければならない。
それが、小川や河川の状況が許容可能であれば良いが、充分な湧出量を持たない池では、良い選択肢ではないかもしれない。
(Page and images copyright 2007 Bryan Smith. All rights reserved.)