ロールスロイス マーリン 23
P51 ムスタングの近くに展示されていたエンジン。
写真を撮る私に、説明のボランティアをしている老紳士が、「美しいエンジンだろ」と、話しかけてきた。
チャージャーのことを聞くと、「ツーステージ スーパーチャーが付いている」と答えた。
黒く塗られたエンジンは、画像よりもくすんだ印象で、特段美しいと思わせる要素を見出せなかったが・・・。
しかし、このエンジンは、ロースルロイス製 マーリン23という傑作エンジンだった。
バトル オブ ブリテンで活躍したスピットファイヤや、ホーカーハリケーンに搭載されていた、第二次大戦中の代表的航空機用エンジンの一つ。
また、前項の ロッキード P51 ムスタングにも搭載され、その圧倒的活躍に寄与した。
最終的な生産台数は、168,000台以上にのぼる。
画像中:キャブレター側から見たマーリン23。
一番下に付いているのが、SUキャブレター。
キャブレターから出た混合気は、画像中心部にある巻貝状のスーパーチャージャーユニットで圧縮され、マニフォールドを経て、シリンダーヘッドの吸入孔へ向かう。
画像左(イラスト)は、マーリン64。
マーリン23 には付いていないが、このエンジンには、水冷式インタークーラーが付き、充填効率を上げている。
マーリンエンジンは、排気量を変更することなく、スーパーチャージャーの改良によって性能を向上させてきた。
エンジン本体だけでなく、スーパーチャージャーも極めて高性能だった。
ブースト(過給)圧は、6.0 lb/sq.in から、特別仕様のものでは、25.0 lb/sq.in まであった。
また、ブースト圧を上げることができたのは、異常燃焼を防ぐ、ハイオクタンガソリンが供給されていたためである。
日本やドイツは、高性能なハイオクタンガソリンが供給できず、スーパーチャージャーの効果が充分に発揮できなかった。
以下は、スピットファイアの進化の例。
スピットファイア Mk.I
エンジン:マーリン II、III
87オクタン燃料
最大出力:1,030 bhp
スピットファイア Mk.VII、Mk.VIII、Mk.IX、Mk.XVI
エンジン:マーリン 61
100オクタン燃料
最大出力:1,565bhp
マーリンエンジンの、スーパーチャージャーは、航空機用としては、ポピュラーな遠心式である。これは、構造がシンプルなためである。
最初は、1段1速から、1段2速、最終的には2段2速へと進化していった。
2段2速とは、イラストにあるように、混合気は、大きなローターで圧縮された後、小さなローターで更に圧縮される。
高度が上がると、自動的にローターの回転数が高速側へ切り替わり、充分なエンジン出力を保障した。
Rolls Royce Merlin 23 Technical Data | |
タイプ | X型12気筒 水冷式航空機エンジン 2ステージ スーパーチャージャー 1280bhp(馬力:break horse power) |
ノーマルスピード | 3000rpm |
ボア | 137mm |
ストローク | 152mm |
圧縮比 | 6:1 |
排気量 | 27.04 L |
重量 | 649kg |
その他 | バルブ機構:オーバーヘッドカム、4バルブ 燃料:87オクタン価 ガソリン 潤滑方式:ドライサンプ |