興味の壺

メカデザイン、機器デザイン、プロダクトデザイン、伝統的アーキテクチャー等を紹介します。

善水寺

善水寺は、滋賀県湖南市岩根にある、岩根山にある。
通りの少ない登りを暫く走ると、人けの無い駐車場の先に、本堂はあった。
午前中の早い時間のせいか、参拝客は、我々だけだった。

善水寺 本堂(国宝) 善水寺 本堂(国宝)

まだ寒く、深々とした大気の中、本堂は静かに存在していた。
大きな入母屋、檜皮屋根、素朴で、衒(てら)いや、過剰な装飾はない。
多少、傷みが進んでいるとはいえ、造りはかなり良い。手が込んでいる。

寺伝によると、創建は奈良時代中期の和銅年間(708年〜715年)。
国家鎮護の道場として草創され、和銅寺と号す。
平安時代、天台宗の開祖である最澄によって天台宗に改宗され、様々な建物が整えられた。

現存する本堂(国宝)は、延文5年(1360年)の火災で焼失した後、延海上人によって貞治3年(1364年)に再建され、現在まで当初の様相を保っている。
建築様式は、和様を基調としながら、鎌倉時代に、宋からもたらされた大仏様や禅宗様などの要素を取り入れた、新和様。

善水寺には多くの諸仏が祀られていて驚く。
須弥壇の左右には梵天、帝釈天立像が安置され、その周囲を四天王立像が囲む。
これら梵天、帝釈天、四天王のセットは、密教において立体曼荼羅を構成する基本的な配置。

後陣には滋賀県最古の不動明王像、地天女によって支えられた兜跋(とばつ)毘沙門天立像、僧形文殊菩薩座像、東大寺に残るものに酷似した誕生釈迦仏立像が安置されている。

もう少し知られてもいいと思ったが、立地場所のせいか、参拝客は少ない。
本堂の檜皮が傷み、葺き替えが必要な状況だった。
早期の修復を祈念し、善水寺を後にする。